つむぎとうか
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家族みたいに暮らしてるけど恋人同士のカイルカ
どなたかタイトルセンス下さい・・・
きょうは、何の撮影なのだっけ?
朝食の席で何気なく交わした会話。
『さあ、なんだか豪華なPVだと聞きましたけど』
詳細は伏せられているらしく、首を傾げながら出掛けた女性陣を、たまたま手の空いたレンが迎えに行った。
しばらく後、カイトの携帯が着信を告げた。
「カイ兄、来た方がいい。いや夕立が降ってきて傘が必要とかじゃないから。見ないと後悔するだろうから」
いまいち要領は得ないが、興奮していることは伝わったので、夕飯の下ごしらえを済ませて現場に向かう。
楽屋に足を踏み入れた彼を待っていたものは。
「遅いよお兄ちゃん。髪型とか崩れちゃったじゃん」
頬を膨らませるのはリンだ。
「まあ、どうせ後日公開されるんだからいいんだけど」
疲れたように嘆息するのはメイコ。
「ふふふ、小道具とかもめちゃくちゃ凝ってるでしょう」
ミクは、嬉しそうにバッグやらアクセサリーやらを掲げてみせた。
レンが呼び出したのは、姉妹達が珍しい格好をしているからだろう。
基本は同型だが、裾や袖のデザインが微妙に異なる、光沢も眩い、純白。
所謂ウェディングドレス、と呼ばれる衣装を。
「――ルカはっ!?」
「ルカちゃんなら、曲の打ち合わせが残ってるから、まだスタジオだよ」
もちろん、着替えてないよ。と、溢れんばかりの笑みで教えてくれるミク。
顔にはでかでかと“面白い”と書いてあった。
が、カイトはそれに気づくことなく、聞いた途端まっしぐらに駆け出していた。
「ほんっと、わかりやすい性格してるよねぇ」
実にいじりがいがあるわ、と頷きあう妹たち。
ほどほどにしときなさいよ、と、言葉だけは呆れながらも。
メイコもレンもにやにやしていた。
中世ヨーロッパあたりを連想させるセッティング。
今にも鐘が鳴りそうな教会のステンドグラスの下に佇む、長いヴェールに覆われたすらりと伸びた背中。
露出は多目なのだが、全身からは清楚な色気が滲み出る。
「あれ、カイトさん?」
振り返ったルカは、薄化粧を施されて、神々しいまでに美しかった。
もちろん、カイトの欲目も含んでの話だが。
「プロデューサーにセクハラとかされなかったか!?」
「いえ、とっくに解散しましたけど・・・」
ミクたちに待機しているように、って。
カイトは見事に踊らされていたわけだ。
「いくら仕事でも、そこまで綺麗になられると心配になるよ」
理不尽な不満をぶちぶち述べつつ、目を丸くする彼女の真横に立ち、祭壇を前に向かい合う。
「俺が普段着なのがちょっといただけないけど」
動かないでね、と、カイトは嵌めていたシンプルなシルバーリングを外す。
自分のものと比べてずっと白く細い左手を、胸の高さにまで持ち上げて。
薬指に差し込んだ。
「ちょっとぉ、挙式は参列者がいなきゃ成り立たないでしょっ」
追いかけてきた他の家族たちに舌をだしながら。
弟妹の目を盗んで、ルカの耳元に囁きを落とした。
(本物は、近いうちに)
帰宅したルカは、姉妹たちにからかわれながらも、ぶかぶかのシルバーリングを暇さえあれば撫でさすっていたとか。
終わり
「イブはどこの式場も一年前から予約しなきゃいけないってさ」
「来年、着てくれるかな?」
「カイト・・・ルカの承諾取らないで予約したら失神しちゃうわよ」
メイコとレンは両側から幸せな男の頭を小突いた。