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つむぎとうか

   
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建前と本音
ミクオ×レン。
ミクオ→ミク前提。
多少どろどろしたのが好みです。

ふと見掛ける度、彼は黄色い歓声に取り囲まれている。
レンが見上げるしかない高い背に、甘いマスク。声質もまた柔らかいとあっては、人気が出ない筈がなかった。
(……女子も気の毒に)
一瞥してレンは目を逸らした。なぜ誰も気づかないのだろう。
ミクオの優しげな微笑が、ただの貼り付けた仮面に過ぎないことに。
本性は、酷薄なだけのシスコンなのに。
「お前に言われたら末期だよ、レン」
無意識に口にしていたのか、それとも心でも読んだのか。
いつの間にか彼が背後にいた。
耳元で囁くのは、殆ど嘲笑だ。
ミクオはレンには一切容赦をしない。いまだって口元は笑みに彩られているものの、瞳は冷たく歪むばかりだ。
「年がら年中、リン、リンって」
「……俺はシスコンだけどたらしじゃねーし」
自他共に認める女好きであるミクオだが、ぬくもりが得られれば相手は問わないのだという。
彼がその心に住まわせているのは姉のミクだけだ。

ミク以外なら誰でもいいのだと、最低な腹の内を明かしたさえある。
迫ってくる異性に片っ端から手出しするだけじゃ飽き足らず、あろうことかリンにまでちょっかいをかけようとした。
『クオ兄が見境ないのは知ってたけど、妹同然のリンにまでかよ!あいつを戸惑わせるな』
怒り狂って釘をさしに来たレンの腕を掴んで。
落ち着き払った声でミクオは言い放った。
『代わりに慰めてくれるなら、レンでもいいけど』
――リンはミクオを慕っている。本気で恋をしたらきっと泣く羽目になる。
レンは一瞬で計算をめぐらせた。そして、仇敵に噛みつくようにして応えたのだった。
――仕方ないから、付き合ってやるよ。

どうかしている、彼も自分も。
「リンを守るためなら、ミクオ兄の牙くらい耐えてやる」
「随分な言い草だな」
額に降らせる唇は、本性に反して穏やかだ。
夢中になる女子が後を絶たないのも、不本意だが理解できてしまう。
「まあ、ミク以外にどう思われようといいけど」
けれども本音は、相変わらずの残酷さである。
歪んだ彼を振り向かせられる手立てもない。
……結局レンも、ミクオの牙にとらわれた一人。
「馬鹿」

素直に告げられないから、仮初めの日々に甘んじておく。
報われない話だ。
 

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