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つむぎとうか

   
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カケヒキ
ミクオ→←リン 
そしてちょこっとレンミクな学園パロ


真冬の屋上なんて寒すぎて勘弁願いたいけど、二人きりになれる喜びの方が勝る。
「ごめん、遅くなっちゃって」
「四限目体育だったんだろ?リンの時間割くらい覚えたよ」
扉を開けて風除けに。その陰で巾着を解く。
中等部と高等部は色々勝手が違うが、昼休みだけは重なっていた。
「はい、今日のおかずはどれがいい?」
お互いの弁当箱から一品ずつを交換する。リンが入学してきた時から変わらない習慣だった。
「ミクオ君の好きなウインナー?それとも肉じゃが?」
「きょうは野菜でいこう。お浸しあげるからサラダちょーだい」
箸を動かしながらのおしゃべりは、毎日途切れることなく続いていく。

ミクオとリンが知り合ったのは、小学校で同じ委員会に所属していたのがきっかけだ。
リンが私立の中高一貫校に合格した去年の春、偶然再会した。
それまで何度か話したことはあったけれど、親しくなっていったのはここ二年だ。
彼らの関係は“友人同士”である。
「ありえない。一緒にごはん食べたり放課後帰り合わせたり、休みにはお出かけしてるのに恋人じゃないわけ?」
下校中に鉢合わせしたミクがうむむと唸った。
周囲には彼氏彼女と認識されている節がある。面倒なので訂正はしないけれど。
「というか私だって毎日レン君といちゃつきたいくらいだよ!?忙しいと無理だけどっ」
「レンに言ってあげたら喜ぶよ。ついでにミクオ君とはべつにいちゃついてないから」
仲良しなんだよねーと邪気のない笑みを向けられたら、つられてにこにこしてしまう。
同学年で年子の姉であるミクは、リンの双子の弟と付き合っていた。
「あ、きょうはお買い物したいからここで。ミクオ君、ミクちゃん、また明日ねー」
「うん。無駄遣いには気をつけろよ」
リンは駅前の商店街で姉弟に手を振った。

電車を待っているホームで、ミクからのじと目が突き刺さる。
「…なぁにが「気をつけろよ」なの。ついてくぐらいの気概を見せなさいよ」
「だって、買い物に口出しされたら嫌かもだろ?」
「このへたれ弟!」
ぼすっと鞄をぶつけられた。辞書でも入っているのか、案外痛い。
「暴力反対。レンに言いつけるぞ」
「いいもん、意気地なしを奮起させるためなんだから!」
女顔と称されるミクオは姉によく似ているが、怒ったとしてもこんな般若みたいな表情にはなるまい。
「ミクがカリカリしてどーすんの。リン、好きな奴いるじゃん」
「カイト先生とかただの憧れでしょっ」
あんたが告白しなきゃ始まらないでしょ。リンちゃん鈍いんだから。
さりげなく片思いを揶揄されたが、家族相手に誤魔化しは通用しないだろう。
「だって、今の状態でじゅうぶん楽しいよ?気まずくなったりしたら合わす顔ないし」
「ふーん、じゃあリンちゃんに彼氏が出来ても喜んであげるんだ?」
仮定の話にしても随分意地が悪い。そんなの嫌に決まっている。
「出来れば俺がなりたいけどさ…」
煮え切らない。ミクはもう一回喝を入れようとしたが、ホームに人が増えてきた。
(帰ったらじっくり問い詰めてはっぱかけてやるわ)
見込みのないお節介なんて焼かない。彼氏もリンも大好きだから、ミクオとくっついてくれたらどんなに幸せだろうと思うのだ。

「レン、こっちはどうかな?」
「ミクオにはもっと明るい柄が似合うんじゃねーの」
店に呼び出され、とっかえひっかえ。一時間近くも悩んでいるのはマフラーの材料だ。
手作りプレゼントとか重いんじゃね?と忠告したが、ミクオ君はよろこんでくれるもん、とすました顔だった。
我が姉ながら思わせぶりなことをする。
「あのさリン、もうすぐバレンタインだよな。チョコに加えてこんなん渡したら、全校中噂で持ち切りだぞ」
「いいじゃん。私は気にしないもの」
これにしよう、と深緑の髪が映える毛糸玉を手に。リンはすたすたとレジに向かう。
「ミクオの気持ちも考えてやれって」
「わかってないなぁ、レンは」
やれやれというため息と共に唇の端を上げる。
「待ってるの、私」
贈り物を受け取った彼が、どんな反応をするのか。
想いを伝えてくれるのか。
「いっつもくっついてたら、切り出すタイミングを見失っちゃったの。だから、好きって言って欲しいなーって」
拒否なんてするはずがない。
リンにとって、ミクオと過ごす一分一秒が宝物なのだから。
「これは賭けだよ。告げ口したら怒るからね」
「り、了解」
思わず頷いてしまったが、本人以外――たとえばミクにうっかりばらしてしまっても問題はないはずだ。
だって、ミクオが動いてくれないと話にならないのだ。
(厄介な姉で悪い)
でも、彼らが相思相愛だとわかっているから、願わずにはいられない。

神様どうか、もどかしい彼らに祝福を!

終わり
 

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