つむぎとうか
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転生義兄弟14
タイトル思いつかない小ネタ14。
翌々年の春、ギルガメッシュは高校を卒業するなり日本を発った。
行き先は愚問である。雁夜も綺礼も薄々予想していたが、時臣の帰国まで待てなかったらしい。
アーチボルト家に下宿していた彼を説き伏せ――というのは、遠坂家の両親への報告に用いられた表現だから、実際はもっと強引だったのかもしれない――、まんまと同居生活を開始したということだ。
引っ越しのエアメールが届いた時、雁夜は思わず手を合わせて友人の無事を祈った。
そして、二つばかりの季節を越えた。
+++++
「なあ言峰、僕らが遠坂先輩の卒業祝いに何贈ったか覚えてるか?」
「忘れるわけがないだろう。万年筆だ」
「次の年、誕生日兼ファウンデーションコースの修了祝いで送ったのは?」
「確か、革の手帳だったな。万年筆と同系色の」
「さらに一年経って、なんで今度は携帯電話なんだよ!?」
遠坂先輩が機械苦手なの知ってるだろう――切嗣は納得していない表情で愚痴るが、遅い。購入手続きはもう完了した。
「ご両親がお望みなのだから、他の品を選ぶのも非礼だろう」
イギリスに留学中の息子に毎年プレゼントを欠かさない後輩二人を、遠坂家の両親は感心な子たちだと喜んで迎えてくれた。そして、もし良ければ、と前置き付きでリクエストしてきたのだ。
『あの子、未だに携帯持とうとしないのよ。親よりアナログとか大概だと思わない? いい加減連絡手段くらい欲しいし、海外とも通話可能な機種なんて山ほどあるでしょう。あなたたちが見繕ってくれたものなら時臣も突き返さないわ』
もちろん、毎月の使用料は支払うから、最初に本体代金だけを誕生日祝いとして出すということで話は纏まり、切嗣と綺礼はケータイショップを訪れた。
色々眺めたり尋ねたりして、切嗣は初心者向けのシンプルな機種をと考えたのだが、綺礼と店員の迫力に押しきられた。
購入したのは、複雑な機能が沢山ついた最新機種の一台だ。
「ご両親は喜んでくださるはずだ」
「でも、肝心の本人が嬉しくなきゃ無意味なんじゃないか? イギリスで二年過ごしたからって、機械に強くなるわけじゃないだろ」
そういえば、綺礼は時臣の近況を知っているのだっけ。切嗣は思い出す。大学も別々で会うのは久しぶりだが、高校時代の知り合いとはまめにメールをやりとりし、時臣とも、文通という形で交流を続けているらしい。
ならば、彼の周辺で何か変化でもあったのか。
「時臣さんは、春からアーチボルト家を出て独立したぞ。下宿を引き払うことはないと止められたそうだが。アルバイトをして、大学近くのフラットで暮らしている」
「へえ、外国で一人暮らしとはなかなか思い切ったな」
「ひとりじゃない」
「……ルームシェア、ってことか」
なるほど、生活を共にしても構わないほど親しい友人が向こうに出来たのか。
かつての遠坂時臣のイメージにそぐわないが、良い方向に変化したのだろう。きっと。
「携帯の使い方くらい、同居人がみっちり仕込んでくれるさ。時臣さんからのメールを受け取れる日も近いかもしれないな」
「――まるで、同居人の方とも知り合いみたいな口振りだな」
「切嗣、お前も良く知ってる人物だ」
「だってイギリスだろ? 言峰と共通の知り合いで、あっちに関係してるケイネス先生も、ウェイバー先生も、ソラウ先輩もこっちにいるし……」
「気になるなら間桐先輩か禅城先輩にでも訊いてみろ」
もしかして、知らなかったのは自分だけなのだろうか――
切嗣はひそかにショックを受けた。どうして皆教えてくれなかったんだろう。
+++++
ああ、卒業以来会っていない知り合いなら、もう一人いたっけ。
金髪紅眼の時臣の義弟は、遠坂邸のどこにも見当たらなかった。
行き先は愚問である。雁夜も綺礼も薄々予想していたが、時臣の帰国まで待てなかったらしい。
アーチボルト家に下宿していた彼を説き伏せ――というのは、遠坂家の両親への報告に用いられた表現だから、実際はもっと強引だったのかもしれない――、まんまと同居生活を開始したということだ。
引っ越しのエアメールが届いた時、雁夜は思わず手を合わせて友人の無事を祈った。
そして、二つばかりの季節を越えた。
+++++
「なあ言峰、僕らが遠坂先輩の卒業祝いに何贈ったか覚えてるか?」
「忘れるわけがないだろう。万年筆だ」
「次の年、誕生日兼ファウンデーションコースの修了祝いで送ったのは?」
「確か、革の手帳だったな。万年筆と同系色の」
「さらに一年経って、なんで今度は携帯電話なんだよ!?」
遠坂先輩が機械苦手なの知ってるだろう――切嗣は納得していない表情で愚痴るが、遅い。購入手続きはもう完了した。
「ご両親がお望みなのだから、他の品を選ぶのも非礼だろう」
イギリスに留学中の息子に毎年プレゼントを欠かさない後輩二人を、遠坂家の両親は感心な子たちだと喜んで迎えてくれた。そして、もし良ければ、と前置き付きでリクエストしてきたのだ。
『あの子、未だに携帯持とうとしないのよ。親よりアナログとか大概だと思わない? いい加減連絡手段くらい欲しいし、海外とも通話可能な機種なんて山ほどあるでしょう。あなたたちが見繕ってくれたものなら時臣も突き返さないわ』
もちろん、毎月の使用料は支払うから、最初に本体代金だけを誕生日祝いとして出すということで話は纏まり、切嗣と綺礼はケータイショップを訪れた。
色々眺めたり尋ねたりして、切嗣は初心者向けのシンプルな機種をと考えたのだが、綺礼と店員の迫力に押しきられた。
購入したのは、複雑な機能が沢山ついた最新機種の一台だ。
「ご両親は喜んでくださるはずだ」
「でも、肝心の本人が嬉しくなきゃ無意味なんじゃないか? イギリスで二年過ごしたからって、機械に強くなるわけじゃないだろ」
そういえば、綺礼は時臣の近況を知っているのだっけ。切嗣は思い出す。大学も別々で会うのは久しぶりだが、高校時代の知り合いとはまめにメールをやりとりし、時臣とも、文通という形で交流を続けているらしい。
ならば、彼の周辺で何か変化でもあったのか。
「時臣さんは、春からアーチボルト家を出て独立したぞ。下宿を引き払うことはないと止められたそうだが。アルバイトをして、大学近くのフラットで暮らしている」
「へえ、外国で一人暮らしとはなかなか思い切ったな」
「ひとりじゃない」
「……ルームシェア、ってことか」
なるほど、生活を共にしても構わないほど親しい友人が向こうに出来たのか。
かつての遠坂時臣のイメージにそぐわないが、良い方向に変化したのだろう。きっと。
「携帯の使い方くらい、同居人がみっちり仕込んでくれるさ。時臣さんからのメールを受け取れる日も近いかもしれないな」
「――まるで、同居人の方とも知り合いみたいな口振りだな」
「切嗣、お前も良く知ってる人物だ」
「だってイギリスだろ? 言峰と共通の知り合いで、あっちに関係してるケイネス先生も、ウェイバー先生も、ソラウ先輩もこっちにいるし……」
「気になるなら間桐先輩か禅城先輩にでも訊いてみろ」
もしかして、知らなかったのは自分だけなのだろうか――
切嗣はひそかにショックを受けた。どうして皆教えてくれなかったんだろう。
+++++
ああ、卒業以来会っていない知り合いなら、もう一人いたっけ。
金髪紅眼の時臣の義弟は、遠坂邸のどこにも見当たらなかった。
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