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つむぎとうか

   
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Target
米烏。
年下男性が空回り気味な状態が好きです。

彼女は笑っている。
「アメリカ君」
顔を合わせるのは大抵ロシアやソビエト連邦の誰かが同席している時で、アメリカがウクライナに言葉をかけると、いつも困ったように眉を下げて、ゆっくりと首を振るのだった。
(また、今度ね)
その機会がいつまでも来ないから、めげずに話しかけるのに。
その日も同じように交わされるのだと予想していた。
「ウクライナ、今度食事でもどうだい?」
「うん、行きたいな」
「そうは言ってもね…って、え?」
にこにこ。彼女の笑みからは、いつもの陰など全くうかがえない。
情けない話だが、承諾されてかえって次の言葉が見つからず固まった。
「で、いつ、どこに連れて行ってくれるの?」
てきぱきと段取りを決めてくれるので、アメリカも徐々に、考えていた内容を思い出し喋ることが出来た。
心中でガッツポーズをとる。
(デートの約束、取り付けたぞ――!)
「ふふ、そんなに喜ぶなんてね。相談があるなら、もっと早くに言ってくれたら良かったのに」
「何のことだい?」
「食事しながら、聞いて欲しい悩みがあるんでしょ?」
ウクライナはきらきら目を輝かせている。
「あのさ…男女の逢い引きに相談がいるのかい?」
忘れてた。アメリカは額に手をやった。
彼女はくせのある弟妹の面倒を見てきた姉であり。対するアメリカは傍から見れば明らかな弟気質だった。
少々のお節介や優しさも、アメリカの好むところではあったが。
「俺は、君に頼って甘えたいわけじゃないんだ。対等に、与えたり与えられたりしたいんだよ」
鋭い光を瞳に宿す。
意味に気づいたのか、ウクライナが赤面した瞬間を狙って、すかさず腕を握りしめた。
「ええと、そういうことなら、ちょっと考えさせてくれるかな…?」
彼女が俯いて口ごもると、アメリカは今の真剣さが嘘みたいにへらっと頬を緩ませた。
「返事は、君の都合がつく時で構わないから」
時間とらせたね、と腕を解放し、手を振る。
うるさい弟妹に見つかる前に――ひらり、アメリカは姿を消した。
その場に立ちすくむ彼女を残して。

「どうしたの、姉さん?」
ロシアが現れるまで、ウクライナは足が縫い止められたように動けなかった。
「ロシアちゃん。何でもないわ、ぼーっとしてた」
ぎこちない笑顔で取り繕った。

今日のところはこれでいい。
いつまで経っても鈍い彼女に意識させたのだから、上出来だ。
アメリカは口笛を吹いた。が、同時に不安でもあった。
(嫌われたらどうしよう!?)
行動してから気づくのがアメリカの悪癖だった。
だって、このままだと変わらなかったから――弟でも子供でもなく、恋愛対象に昇格することが目標だったのだから。
勝負は、やっと始まったばかりだ。

終わり

 

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