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つむぎとうか

   
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空中密室にて
学ヘタで独+セー。
この二人が友情を結んだら可愛いと思います。

巨大な学園には大抵の設備が揃っている。
エレベーターもだ。高層ビルとまではいかないが、生徒会室は最上階にあるので(バカと何やらは、と口にしたらイギリスに小突かれた)、雑用係のセーシェルはよく利用していた。
いつもの放課後になるはずだった。
アフリカクラスに、「今から書類持参でマッハで来い」と、会長からの伝言が届けられるまでは。
書類なら明け方までかかって準備を整えてあった。授業終了後、いそいそとエレベーターに乗り込んだら、先客がいた。
息せき切ったセーシェルを驚いたように凝視している。
「あ、あなたは漫研の、」
親しみを覚えたのはイタリアと日本に対してだったが、彼の顔も記憶はしていた。「ドイツだ」
何階だ?と事務的に問う。島から来たばかりの時なら怯えていたかもしれないが、少しは度胸もついた。強面くらいなら笑顔で返答できる。
「最上階をお願いしますっ」
ドイツは同じフロアの漫研の部室に用があるのだという。
ボタンを押して、扉が閉まった。

動きが止まったのは三階あたりだ。更に電気も落ちた。
「て、停電!?」
「雷にやられたか…悪天候続きだったからな」
冷静を保つドイツに較べ、セーシェルはうろたえていた。広い砂浜を駆け回り育ったから、関所暗所への免疫がないのだ。
震えていると、闇のなか大きな手が伸びてきた。
「安心しろ、すぐに修復システムが動く」
頭上から降る落ち着いた声音と、握り返した手のあたたかさに。セーシェルもパニック状態を解いて、会話する余裕が出来た。
「ドイツさんは、漫画が好きなんですか?」
「いや。日本やイタリアに誘われて入ったから」
「仲良しなんですね」
セーシェルは気づく由もなかったが、ドイツは異性と密着している状況に真っ赤になっていた。
「(眉毛野郎を除いて)皆さん良くしてくれますけど、私、お友達はまだいないんです」
少し寂しそうに声を落とすので、彼は思わず指に力をこめた。
「俺やあいつらとは、まだ友人じゃないのか?」
「もし良ければ」
「植民地云々は関係なしに、セーシェルの友人になれないか?」
柄にもない言葉だった。普段の状況なら絶対に口にしないような。断られるのが怖いと立て板に水の勢いで、ドイツは言い連ねた。
セーシェルは目を丸くした。そうだ、彼は同学年だったのだ。
「喜んで」
いかつい外見をしているが不器用で優しい新たな“友達”に、セーシェルは暗さも吹き飛ばす明るい声で、手をぶんぶん振り回した。

タイミングよく電灯が灯り、エレベーターが再び動き出す。
「今度、部室に遊びに行きますね!」
降りる瞬間、楽しそうに囁いた少女に、ドイツもまたぎこちなく微笑みかえした。
 

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