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つむぎとうか

   
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破壊願望
英列前提の西列。
募った恨みをぶつけるのは。


「つまらへんなぁ」
向かい合った少女に言い聞かせるでもなく囁いたら、細い肩がびくりと震えた。
怖がるなと言う方が無理だろう、ほとんど面識のない男と密室で二人きり、という状況では。
少女は気丈に唇を噛みしめ、悲鳴も弱音も発しない。
堪えているとわかる、震える白い手がぎゅっと握り締めているのは、薔薇を象ったコサージュだ。
深いグリーンのドレスに、シンプルに飾られた同色の薔薇。少女の瞳と揃いで美しい。
…苛々する。
スペインは、ドレスの贈り主を騙ってリヒテンシュタインをここまで呼び寄せた。その男や少女の兄が、決して踏み込まない部屋に。
扉を開けた瞬間のリヒテンの輝いた顔、スペインを認めた時の戸惑を順に見守って、少女がゆっくり怯えていくように仕向けた。
『残念やなあ。イギリスはここに来られへんで』
綺麗に着飾った姿、見てもらいたかったやろうに。堪忍な――声音は撫でるように優しいのに、表情は冷たく鋭く、リヒテンシュタインは足を縫い止められたみたいに動けなかった。
スペインの目的がうっすら浮かんできたのだ。
(奪ってやる、あの男の大切な物を)
スペインがかつて何もかも毟り取られたように。――危険を察知しながらも、リヒテンシュタインは視線を外さなかった。
「私を好きにして気が済むのでしたら」
それがイギリスを愛した代償なら、傷つけられれも構わない。
痛みだって受け入れよう。
「やっぱり、おもろないわ。恐れない相手を蹂躙するのは、気が進まへん」
スペインは苦笑いすると、ひょいと屈んで少女の首筋に噛みついた。
緑の衣装に、紅痕一輪。
憎い相手への意趣返しにはなるだろう。
「きつい冗談やった?」
飄々と扉の鍵を開け、出て行く。すれ違いざま、少女がへたり込むのを視界にとらえ、歪んだ笑みを宿した。
――おもろそうな女の子やん。

また、気まぐれに手を伸ばそうか。

終わり

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