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つむぎとうか

   
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仮想パーティー(準備編)
英塞祭Rさまに提出したもの。
学ヘタにて、「セーシェルがパーティー実行委員になった」というお題でした。
お祭り期間はまさに楽園でした・・・!
厚かましくも参加させていただき、幸せでした。

前日編と当日編に分割しました。
おそらく単品でも読めます。

「イギリスさんのばか!横暴者っ」
叫びを響き渡らせながら。
生徒会室から飛び出したセーシェルは、全力で廊下を駆け抜けると、階段の隅にしゃがみ込んだ。
膝を抱えて顔を埋める。校舎を往く生徒たちが、ぎょっとした視線を注いでいく気配が感じられた。
沈んでいるのが首輪をつけた少女とわかると、心配や好奇よりも、「関わりたくない」という意識が勝るのか。
声を掛けてくるような勇者はいない。
(そのへんの事情も知らなかったから、私はみすみす極悪非道の元ヤン会長に捕まってしまって)
つい今まで言い争いをしていた、イギリスへの不満で頭がいっぱいになる。
我に返ってかぶりを振った。悪口ばかり並べて、さぞかし醜い顔をしていることだろう。
可愛く、ないなぁ。
自己嫌悪に心が軋んだ。
「ふぇ・・・う、っく・・・」
放課後すぐの人目も絶えない時間帯に、堪えられず泣くなんてみっともないのに。
涙は堰を切ったみたいに溢れてきた。
押し殺した呻きを続けて、どれくらい経ったのか。
窓から夕焼けが赤く照らされる頃、救いの手が差しのべられた。
「ーー大丈夫か?」
おずおずと声を降らせてきたのは。
低く硬いが、気遣いに満ちた調子のドイツだった。

漫研の部室(と呼んだら、日本が嬉しそうに頷いた)に案内されると、イタリアが飛んできた。
「ヴェー、セーちゃん、何があったの!?俺でよかったら相談に乗るから」
差し出されたのは、湯気と共に柔らかな匂いが立ち昇るラテ。ソーサーの縁には焼き菓子が添えられていて、口に含めば優しい味に満たされた。
少しだけ、落ち着いた。
「ありがとうございます、実はーー」
無理なく微笑めるまでに回復してから、心配そうに見守る三人に事情を説明し始めた。

発端は学園祭の役員割当会議だった。
色々と特殊なWW学園ではあるが、学校行事は各国の特色をごた混ぜにしたようにバラエティーに飛んでいる。
学園祭は、カオス感が最もよく表れる大きなイベントだ。
会長のイギリスを始め、年度開始の9月いっぱい、生徒会メンバーが校内のあちこちを忙しく動き回る。
セーシェルも賑やかなことは好きなので、何を任せてもらえるのだろう、と内心わくわくしていた。

「それで、どんな役を振られたんだ?」
「美化係です・・・」
祭りの舞台裏では大量のゴミが出るものだ。きちんと回収していくのも大切な仕事の一つだ。
文句を挟む気なんかなかったのに。
「イギリスさんが発表したら、フランスさんが挙手して」
最終決定権を持つのは会長のイギリスだが、彼に次ぐフランスにもそれなり裁量が委ねられている。
『異議ありー。編入して初めて学園祭を経験するセーシェルには、もっとイイ仕事をあげるべきなんじゃない?』
『お前が言うと変態親父な意味に聞こえるんだよっ!』
フランスは、イギリスに嫌味を投げられるなら何でも良かったのだろうと思う。
そしてイギリスは、セーシェルの反応を見ることもなしに、まんまと挑発に乗った。
『じゃあ、てめえが考えるセーシェルにふさわしい役割とやらを提案してみろ』
フランスはにやにやと肩をすくめた。
『パーティーの実行委員、なんてどうだ?後夜祭の花形なわりに万年人材不足で、盛り上がらないダンスしか開催してねえだろ』
『英国式社交ダンスを貶めたいだけだな?』
話題の当人を含めて、その場にいる全員を置いてけぼりに火花を散らすトップたち。
いつものような低次元の口喧嘩に発展したところで、セーシェルは堪忍袋の緒が切れた。
『いい加減にして下さいっ!』
ーー二人とも、本題忘れきってるじゃないですか!私以外にも、まだ決まってないことが沢山あるでしょう。
仕掛けたフランスは素直に頭を下げた。
『すまん、セーシェル。お兄さん、困らせてまで無理強いする気はないよ』
しかし、イギリスは引っ込みがつかなかった。
『やっぱりお前も、髭の提案の方がいいのか』
『誰もそんなことは言ってません!』
悔しかった。自分を言い争いのだしにされ、考えを押しつけられて。
宗主国と植民地、という論理を持ち出されたら逆らえないがーー
(意見を聞いて欲しい、だけなのに)
そんなささやかな要望すら届かないのか。
『ああ、じゃあお望み通り実行委員に命じてやるよ!』
乱暴なくせに、傷ついたみたいな顔で。
沸き上がる動揺を抑えられず、がたんと席を立った。
『イギリスさんのばか!横暴ものっ』
そして、冒頭に戻る。

ぶちまけ終わったセーシェルを前に。
日本は呆れた。イタリアはがんばって聞き取ろうとしていたが、シエスタの体勢に入っている。
ドイツが、何ともいえない表情で沈黙を破った。
「それはーー完全にあちらに非があるのではないか?」
少女相手に大人げない仕打ちをする。生徒会関連では有能な男だと思っていたのだが。
(ああ、ドイツさんは理解しかねているようですね)
曲がりなりにも仕事に手抜きはなかったイギリスが、判断力や冷静さを欠いてしまう理由。
おそらくそれは、相手がセーシェルだからだ。
少女の悔し涙だって同じこと。
「全く、不器用な会長さんですねぇ」
話し声よりも高く張り上げて、廊下の向こうに届ける。
扉の隙間から窺っている影を視界に捉えたので。
「でも、貴女が戻ったら何かが変わるかもしれませんよ、セーシェルさん。それでもイギリスさんが頑なな態度を取り続けるなら、私にも考えがあります」
「そういえば、日本はイギリスの数少ない友達だったか」
「友達少なくて悪かったな、クラウツ野郎!」
ほら、尻尾を見せた。
「・・・よくここがわかりましたね」
「会議をボイコットするんじゃねえ。ほら、戻るぞ」
眉毛の濃い彼には途端にぶすっとした表情を向けたセーシェルだが、差し出された手は取った。
去り際、漫研の面々に深くお辞儀した。
「ありがとうございました。迷惑かけちゃったでしょうか」
「お気になさらず。また、いつでも遊びに来てください」
イギリスさんもきっと機嫌を直しますよ、と。
無言の圧力をかけると、イギリスはぴくりと肩を震わせた。

「珍しいですね、あんな殊勝なイギリスさんなんて」
「うるせぇ暴走娘」
話しているうちに思い至ったことがある。
「否定されるのが怖かったんですか?」
セーシェルの意見を容れずに、決定を下そうとしたこと。
裏を返せば、少女の本心を知りたくないという意味にもとれるわけで。
遮られないので、ちゃんと伝わるように喋った。
「最初の美化係も、嫌がってなんかいませんよ?しっかり頑張ります」
ーー折角だから、パーティーの企画とかもやりたいですけど!
何故だか照れてしまって、早口で付け足した。
並んで歩いていたイギリスは、日本に対する大人しさとは
別人のように凶悪に笑った。
「ほう、覚悟は出来てるか?役割の掛け持ちなんざ、殺人的にやることが増えるぞ?」
「でも、イギリスさんに比べたらましですもん」
セーシェルは知っている。
誰より多くの仕事をこなす生徒会長の下だからこそ、他のメンバーも全力を出すのだ。
「学園祭、成功させましょうね!」
不意打ちに満面の笑顔を向けられ、イギリスは僅かに赤面しながら「ああ」と頷いたのだった。

続く

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