つむぎとうか
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
困った時の日本さん。
普の初恋は洪だけど、いまでは戦友のような連帯感が芽生えているイメージです。
目の前には泣きじゃくる少女。
いつも思うが、兄から離れると妙に打たれ弱くなるのだ。
「なあおい、どうしたらいい?」
携帯電話の通話口、遠い地の元弟子に問う。
“知りませんよ、あなたが泣かせたんでしょう”
日本ににべもなく電話を切られて、プロイセンは途方に暮れた。
「……どっかいけ」
嗚咽混じりに追い立てられた所で、去れる筈がないではないか。
発端は、日常茶飯事と化した求婚風景。
ベラルーシの迫力に、ロシアが怯えたのまでがいつも通り。
不幸なことに、その場にプロイセンとハンガリーが居合わせただけだ。
『僕は彼女が好きなんだよ』
珍しく妹に歩み寄り、ベラとは結婚できないんだ、ごめんね。と頭を撫でた。
ロシアの言い方は誠実なものであったけれど、ベラルーシとて積年の想いをすぐに反古には出来ない。
居たたまれず駆け出して、プロイセンが追いかけて、涙の止まらない彼女を見つけた。
「ぐちゃぐちゃの顔を拭け」
啜り声が止まるのを待って、ハンカチを渡す。
「落ち着くまで黙ってりゃいいから」
機嫌の良い時は主にロシアに関して饒舌なベラルーシが、半刻近くも沈黙を通したので、プロイセンはなんとか空気を緩めたくなった。
「ロシアの野郎が血迷ったこと言ってやがったが、ハンガリーは見かけによらずがさつな女だから、お前に振り向く日も来るかもしれないぜ」
ああ、失敗だ。
ベラルーシの瞳の翳りが濃くなる。
「…お前だってハンガリーにぞっこんだったろうが」
痛い点を突かれる。
「あ、あれは若気の至りというかだな、」
昔好きだったことは認めよう。腐れ縁の女に、惹かれた過去も確かに存在するけれど。
「少なくとも今は、お前の方が心配だ」
強気なくせに脆く、追いかけずにはいられなかった。
「ハンカチくらいで恩を着せるなよ」
「そんなけちけちする男じゃねーよ、俺は」
照れ隠しを見分けられる程度には、ベラルーシの中身を知っている。もっと知りたいと思っている。
(アイツは、どうなんだろうな)
長い時間を経て、同志のように連帯感が芽生えたハンガリーは、ロシアの想いを受け入れるのだろうか。
気がかりではあるが、落ち着いた少女を送り届けるのが先だ。ロシアも妹の帰りを待っているはずで。
華奢な腕を引いて(振り払われなかったのは初めてだ)、プロイセンは歩きだした。
全く、今日はなんて日なのだろう。
日本は何度めかとうんざりしながら、けたたましく鳴る受話器を取った。
「貴女ですか」
プロイセン、ロシア、ベラルーシ、そしてハンガリー。
混乱した彼らは、皆一様に同じような悩みをまくしたてた。こんな相談持ちかけられても。「自分の心と向き合って下さい」
アドバイスにもなっていない一言を投げると、日本は鍵を掛けて散歩に出向いた。
…じじいに頼るんじゃありませんよ。
恋路に迷う彼らは微笑ましかったが。
複雑に絡んだ糸を解きほぐせるのは、本人たちだけだ。
終わり