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つむぎとうか

   
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はかりごと【上】
学パロ・女体化・妊娠ネタ注意
アイリさんは切嗣さんのお姉さん(矩賢さんが国際結婚した)
葵さんは時臣さんの従姉

 遠坂時臣が倒れた、という。
 授業の合間の十五分、移動教室のため歩いていた廊下の真ん中で。
 当然、周囲にはたくさんの生徒がいた。
 すぐに保健室に運ばれた彼女は、養護教諭に貧血だと診断され、しばらく休ませた後早退させる、という、しごく普通の処置が下された。
 倒れたのが時臣以外の生徒であったなら、噂が校内中に広まることもなかっただろう。
 完璧主義者の彼女は、受験を理由に引退するまでは人望熱い生徒会長だった。
 教師でさえ一目置く優等生は、体調管理もしっかりしているのか、高等部三年の三学期まで病欠したことすらなく、あとひと月も経てば“何の問題も起こさなかった、模範的な生徒”として卒業していくはずだったのに。

 いつもと変わらず優美な微笑を浮かべていた彼女だが、倒れる直前の顔色は真っ青だったそうだ。
 額から玉のような汗が噴き、会話していたクラスメートが訝しんだところ、上体を支えきれなくなり、その場に崩れ落ちたらしい。
『大丈夫だから、先に行ってて』
 心配いらないから、と立とうとしたが、すぐに起き上がれるくらいならそもそも倒れたりしない。
 困ったように瞑目した時臣を保健室にまで運んだのは、たまたま通りかかった言峰綺礼だ。 
 躊躇もなくふわりと抱かれた腕の中で、彼女は申し訳なさそうに囁いた。
『綺礼。君のクラスも授業があるでしょう?』
『こういう場合は病人第一で動くものです』
 頼もしい後輩だ、と安心したように呟くと、時臣はことりと意識を途切れさせた。



 禅城葵は怒り心頭だった。
 彼女を目当てに保健室へ通う生徒も多い美人教諭だが、従妹の時臣に関してはおそろしく過保護な親戚である。
 付き添いの綺礼すら『今からなら間に合うわ、授業を受けてらっしゃい』と追い返し、時臣の容態を丁寧に慎重に見極めた。
 ……数十分後、葵はこっそり三人の男子生徒を呼び寄せた。
「あなたたちに来てもらったのには理由があります」
 時臣の同級生であるギルガメッシュと間桐雁夜、そして二年生の綺礼。
 彼らを招き、入口のドアは施錠した。立入禁止の札を吊るして、人払いはばっちりだ。
 三人は揃ってまず時臣の様子――薬を飲ませ寝かせている――を確かめ、次に何だろうと葵の表情をうかがった。
「単刀直入に訊くわ。この中に、時臣の彼氏はいる?」
「「「……」」」
 三人は貝のように沈黙した。
 イエスかノーかで問われれば、心当たりはない。が、幼い頃から時臣を溺愛しているという葵が自分たちに見当をつけたのならそれなりに根拠があるのだろう。全員、自分以外の二人のどちらかが時臣と付き合っているのだと考えた。
 彼らはそれぞれ時臣に想いを寄せていたが、時臣に現在恋人がいるだなんて初耳だ。
 ギルガメッシュは紅眼に強い光で雁夜と綺礼を睨み、雁夜はひたすら時臣の眠るベッドに視線をやり、綺礼はいつも通りの無表情でなりゆきを観察していた。
 ひとりとして動こうとはしない。このままでは埒が明かない。
(誰だとしても、素直に応援できそうにはないけれど……)
 ギルガメッシュは世辞にも誠実とは言えない素行を繰り返している。時臣をつまらぬと評する割にちょっかいもかけているそうだが、正直付き合ったとしたらすぐに浮気しそうなタイプだ。葵は時臣が浮気され泣いている姿を想像して怒りを増幅させた。
 雁夜は時臣の幼馴染である。良くも悪くも平凡な少年で、時臣に対しては乱暴な口を利く。それでも、肝心な時にはちゃんと労っている。葵も長年親しくしてきたが、大事な時臣を任せられるかと問われたら――素直に頷けない頼りなさだ。
 そして、綺礼。先刻のように彼女が困っているとどこからともなく助けの手を差し伸べ、時臣からの好感度は最も高いであろう後輩。
 しかし、あまりに現れるタイミングが絶妙なので、ストーカー疑惑がある。
 時臣と仲の良い異性といったら、この三人の内の誰かだろうと踏んで呼び出したのだが、この反応を見たところ。
(……違うのかしら)
 葵はとにかく時臣の幸せを第一に考えている。彼女が目覚めたら、やんわりと問うつもりだけれど。

 どのように告げるべきか。
 どうやら彼女が妊娠しているらしいことを。


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