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つむぎとうか

   
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初恋
蘭白。
11/23はいい兄さんの日、ということで。
内容かすりもしてませんけど
福井弁わかりません関西弁な蘭兄さんです。

――初恋は誰かって?スペイン親分やで。
いつも迷いもなく即答する妹。
答える場面に遭遇する度、苛立ちが募った。

「あ、帰ってきた。おかえりー」
門扉の前に佇む小柄な姿に、オランダは嘆息した。
「お前っちゅう女は・・・」
夕方にいきなり電話してきて『泊めて』とは何事だ。仕事が定刻で終わったからいいようなものの。
「鍵なくしてしもてん。新しいのは二、三日で作ってもらえるみたいやし、財布の中身は余裕あるから、着替えとかは買い物してから来たわ」
上司も通える距離なら構わん、やって。
両手に重そうな紙袋(数日分の衣類だけでこんなに膨らむものだろうか)を提げ、よろしくなと頭を下げる。
追い返すつもりはそりゃあなかったが。
「空いてる部屋、どのへん?掃除して風通すから案内してー」
「待て」
あまりにテンポ良くベルギーが話を進めるので、オランダは裾を引っ張って止めた。
「端折りすぎや。荷物置いたらゆっくり教えろ」
「おにいちゃん、もう日が暮れてもうたで?晩御飯の支度もせなあかんやん」
さっと荷物から新品のエプロンを取り出し、素早く纏って台所へ走る。
「久々にたっぷり手料理するから。冷蔵庫の中身適当に使わせてな」
まんまと玄関を突破された。

ベルギーの作業をぼーっと眺めているのも間抜けなので、自室でスーツ姿を解いたあと、客室を換気して軽く埃を払った。
おとなしいけれど器用なペースに巻き込まれてしまったが、普段から頻繁に行き来する間柄ではない。
むしろ、連絡を受けた時意外に感じたくらいの疎遠さだ。
喧嘩別れのような独立騒動が尾を引いて、妹に対してはオランダの強気は発揮されないのに。
(頼られるとも思うとらんかったな)
嫌われているのかと、こちらからは近づけなかった。
けれど、向こうから訪れたとなると。嬉しいがどうしたものか。
「おにいちゃーん、準備完了やでっ」
弾むような呼び声に居間へ移動する。まあ、ごちゃごちゃ考えても仕方がないだろう。
ただの宿扱いかもしれないのだし。

食卓に上がる話題は尽きなかった。
隔たりが大きくとも兄妹。ビールジョッキを空け、ベルギーのおしゃべりに適度に相槌を打ち、時には共通の知り合いの近況報告を交わして。
オランダの家では珍しく賑やかな時間を持てた。
食器を片付けてくれている妹の背中に、幼少期から気にしていたことを訊いてみた。
「お前、一体スペインのどこが良かったんじゃ」
「いつの話してるん」
わざわざ振り返って呆れた視線を浴びせられた。
洗い物は完了したらしい。すとんと、隣の椅子に腰を下ろす。
「初恋の話はノリで答えてただけやで。ほんまに好きな人は内緒やったもん」
「余計気になった」
「えー・・・笑わへんなら教えたる」
こくり頷くと、次の瞬間、白い人差し指を突き付けられた。
「ここだけの話やで?うちの初恋はおにいちゃんやってん」
オランダは俯き震えた。べつに爆笑を堪えているのではない。
「なんで内緒にしとった?あん頃はそう険悪でもなかったやろが」
「だって、ウクライナか誰かが言うたんやもの」
『初恋って、叶わないものなのよ』って。
「おにいちゃんと離れとうなかったし、ばれへんかったらずっと一緒に居られると思っとった」
懐かしむ眼差しを宙に向ける。実際、幼い願いは破られることになった。
「恥ずかしいな。でも今こうしてられるから、ちゃんと幸せやし!」
きっともう時効やろ?
「阿呆。こっちも赤面してもうたわ」
気まずいから早よ風呂行って来い。
大きな手のひらで目元を覆ったオランダに、ベルギーは満面の笑みを見せた。
(よかった、元通りにはいかへんやろうけど)
少しずつでも溝を埋めていけたら。

眠るために目を瞑る寸前、オランダは思い返していた。
ぎこちなく「おやすみ」を告げた時のベルギーの反応を。明日明後日と、どんな顔をして相対しよう。
――まさか今頃になって、妹を意識してしまうなんて。

終わり

「大好きやで、おにいちゃん」


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