つむぎとうか
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少女の相談ごと
普と辺。
よくわからない急造。
プロイセンは悩んでいた。
見張られている気がする。確証はないものの決して好意からではない視線を感じる。
わかりやすく言えば殺気だ。
「・・・物陰から出ろ。ベラルーシ」
相手の予想もついていた。いま受けているどすの利いたオーラを出す知り合いはひとりだけ。
それでも(猫だったりしねえかな)と淡い期待を寄せていたのだが。
「指図されるとは不快だ」
ざしっ。
行動は素直、ただしどの角度からでもプロイセンを睨んでいるのがわかるという、器用な表情をつくって、端正な顔立ちの少女が顔を覗かせた。
「が、隠れていても益はない。ひよこ野郎、折り入って相談がある」
拒否権は与えないぞという口ぶりだった。
ここはロシア管轄の地。
現在、住居はドイツに定めているプロイセンだが、仕事で世界を回るのは他の国家連中と変わらない。誰だプーとか言った奴。
飛び地など抱えているため(それだけではないが)、「寒い」「ロシアが苦手だ」などの私情ではさぼれないのである。
(ああでも厄介だから早く終わらせちまおう)
油を売らず、真面目に上司の話を伝達して、やれやれと帰り支度に駅に向かったところだったのに。
面倒ごとが増えた気がする。
「前から思ってたが、頭に乗せていない時もひよこ野郎なのか?」
「どうせ鳥頭に変わりないだろう」
さらりと酷いことを言う。
立ちっ放しも如何かと喫茶店に入ったが、反対側の席に座るベラルーシは、背筋も伸びて美しい。
ロシアが絡むと鬼女の如き形相になるだけだ。
「が、私の相談には乗れるはずだ。お前も一応“兄”だからな」
彼女の言い草に納得したわけではないが、きょうだい関係に悩んでいるのか。
「まずなぜ兄さんが渾身のプロポーズを受け入れないのか「却下」
いつも通りだった。
「遮らず聞け。本題は姉さんのことだ」
「ウクライナ?」
正直、ベラルーシとウクライナの姉妹仲についてはあまり聞いたことがない。プロイセンでは力になれないだろう。
「お前、ウクライナと喧嘩でもしたのか?」
「良くも悪くもないんだ」
様々な国家が集まる会議の場面でも、ベラルーシはロシアにべったり。ウクライナにしても、弟妹よりアメリカたちと話している印象があった。
「姉さんが遠い。――お前はないのか?弟が離れてしまって、寂しく思うようなことが」
ベラルーシは俯いた。いつもの様子とはちがう、途方に暮れたような態度に。
「そういうときは甘えてみろよ」
簡潔きわまりないアドバイスを、事もなげに言いはなつ。
「俺の場合、ヴェストがつるんでる奴はいいやつ揃いだと思う。交友広がったからってきょうだい蔑ろにしようなんて考えねえし、単にタイミングだろ。だから、お前が近づけばいいんじゃねーの?」
上は下を可愛がりたいんだよ、基本的に。
ベラルーシは少しだけ軽くなった頭をあげた。
――遠い昔。
『ベラちゃん、さむいの?マフラーはロシアちゃんにあげちゃったけど』
ぎゅっと、温めてくれた記憶がよみがえった。
「そうか。兄さんと三人で食事でも誘ってみよう」
感謝する、プロイセン。
礼の言葉は、照れも手伝って小さくなってしまった。
「可愛いところもあるな」
プロイセンはベラルーシへの認識を改めることにした。
普通の話も出来るのか。
「あれで、ロシアで豹変しなきゃなあ・・・」
不毛なことを呟きつつ、家路をいそぐ。
最近疎かにしがちだった、弟とのスキンシップを深めようと思いつつ。
いつになくまとわりついてくる兄に、ドイツが眉を顰めるのはしばらく後の話である。
終わり
それが、少女を意識したはじまりだったのかもしれない。
見張られている気がする。確証はないものの決して好意からではない視線を感じる。
わかりやすく言えば殺気だ。
「・・・物陰から出ろ。ベラルーシ」
相手の予想もついていた。いま受けているどすの利いたオーラを出す知り合いはひとりだけ。
それでも(猫だったりしねえかな)と淡い期待を寄せていたのだが。
「指図されるとは不快だ」
ざしっ。
行動は素直、ただしどの角度からでもプロイセンを睨んでいるのがわかるという、器用な表情をつくって、端正な顔立ちの少女が顔を覗かせた。
「が、隠れていても益はない。ひよこ野郎、折り入って相談がある」
拒否権は与えないぞという口ぶりだった。
ここはロシア管轄の地。
現在、住居はドイツに定めているプロイセンだが、仕事で世界を回るのは他の国家連中と変わらない。誰だプーとか言った奴。
飛び地など抱えているため(それだけではないが)、「寒い」「ロシアが苦手だ」などの私情ではさぼれないのである。
(ああでも厄介だから早く終わらせちまおう)
油を売らず、真面目に上司の話を伝達して、やれやれと帰り支度に駅に向かったところだったのに。
面倒ごとが増えた気がする。
「前から思ってたが、頭に乗せていない時もひよこ野郎なのか?」
「どうせ鳥頭に変わりないだろう」
さらりと酷いことを言う。
立ちっ放しも如何かと喫茶店に入ったが、反対側の席に座るベラルーシは、背筋も伸びて美しい。
ロシアが絡むと鬼女の如き形相になるだけだ。
「が、私の相談には乗れるはずだ。お前も一応“兄”だからな」
彼女の言い草に納得したわけではないが、きょうだい関係に悩んでいるのか。
「まずなぜ兄さんが渾身のプロポーズを受け入れないのか「却下」
いつも通りだった。
「遮らず聞け。本題は姉さんのことだ」
「ウクライナ?」
正直、ベラルーシとウクライナの姉妹仲についてはあまり聞いたことがない。プロイセンでは力になれないだろう。
「お前、ウクライナと喧嘩でもしたのか?」
「良くも悪くもないんだ」
様々な国家が集まる会議の場面でも、ベラルーシはロシアにべったり。ウクライナにしても、弟妹よりアメリカたちと話している印象があった。
「姉さんが遠い。――お前はないのか?弟が離れてしまって、寂しく思うようなことが」
ベラルーシは俯いた。いつもの様子とはちがう、途方に暮れたような態度に。
「そういうときは甘えてみろよ」
簡潔きわまりないアドバイスを、事もなげに言いはなつ。
「俺の場合、ヴェストがつるんでる奴はいいやつ揃いだと思う。交友広がったからってきょうだい蔑ろにしようなんて考えねえし、単にタイミングだろ。だから、お前が近づけばいいんじゃねーの?」
上は下を可愛がりたいんだよ、基本的に。
ベラルーシは少しだけ軽くなった頭をあげた。
――遠い昔。
『ベラちゃん、さむいの?マフラーはロシアちゃんにあげちゃったけど』
ぎゅっと、温めてくれた記憶がよみがえった。
「そうか。兄さんと三人で食事でも誘ってみよう」
感謝する、プロイセン。
礼の言葉は、照れも手伝って小さくなってしまった。
「可愛いところもあるな」
プロイセンはベラルーシへの認識を改めることにした。
普通の話も出来るのか。
「あれで、ロシアで豹変しなきゃなあ・・・」
不毛なことを呟きつつ、家路をいそぐ。
最近疎かにしがちだった、弟とのスキンシップを深めようと思いつつ。
いつになくまとわりついてくる兄に、ドイツが眉を顰めるのはしばらく後の話である。
終わり
それが、少女を意識したはじまりだったのかもしれない。
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