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つむぎとうか

   
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求めるもの
人名使用の墺洪前提仏洪です。

新婚なのにすれ違うローデリヒとエリザ、フランシスはローデリヒの会社の同僚。

要するに不倫です、まことにすみません。

きっかけは実に些細だった。
新婚の同僚の家に、ワインを持参して冷やかしに訪れた夕刻。
悪友は揃って都合が悪く、旦那とフランシスは実はあまり親しくはなかった。が、数回会った妻のエリザは温かく迎えてくれたので、にこやかに食事までご馳走になったのだった。――二人きりで。
アイツは?と、疑問を呈する隙をエリザは与えなかった。
ワインをとくとくと注ぎ、機嫌よく干す。人妻相手にこれはヤバいだろう、と通常の男なら引いてしまう状況だった。
流石のフランシスも「ごめん、ローデがいる時にまたお邪魔するよ」と呟いて退去しようとした瞬間だった。
アルコールで染まった頬のエリザが囁きかけた。
「フランシスさん、気づきません?私、絶対必要なものを着けてないんですよ」
かざした手には結婚指輪が不在で。
「私は、家事でなくしたら困るからたまに外すんです。でもほら、」
ふらり立ち上がり、フランシスの手を引っ張る。躊躇なく開いた扉、そこが夫婦の寝室であることは一目瞭然だった。
「ちょっ、エリザちゃん」
「いいから、見て」
酔った足取りで鏡台の引き出しをひいた、そこには揃いの指輪が並んでいた。
「あのひと、会社でも家でも、はめたことがないんですよ…?」
打ちのめされたように震える肩を慰めようと手をかけたその時だった。
「エリザ、ただいま帰りました。来客ですか?」
離れる間もなく、ローデリヒが気配のある寝室に足を踏み入れた。三者の視線が絡み合う。
「おや、フランシス」
沈黙を破ったのは同僚だった。眼鏡を直す仕草のついでのように、いとも平然とした声音で。
「私はまだ用事を抱えていますから、ゆっくりしてお行きなさい」
会社での素っ気ない態度と何ら変えずに。
ローデリヒは再び家を出た。

「いつもです」
ぽつり、エリザは呟いた。
「結婚以来、仕事か、それ以外にも用事があるって、殆ど顔を合わせてくれない…!」
わたしたちは夫婦なのに、と、彼女は独り言のつもりか続ける。
(いや、動揺はしてたっぽいけど)
去っていくローデリヒの様子を何とはなしに観察していたフランシスは思った。
彼が彼女に無関心などということはありえない。
(教えてあげないけどね)
妻を悲しませる男の肩など持てない。
フランシスは壊れそうなエリザの腕をそっと掴み、流れる涙を拭った。
彼女が必要としているもの。
「寂しいだろ?」
優しく、だが抵抗できないかたちで唇を塞いで。
フランシスは微笑んだ。

おいで、と優しく抱きしめながら。
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