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つむぎとうか

   
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知恵を拝借
英洪。
学ヘタゲームの私服に言及していたり。

突然呼び出すから何の用かと思えば。
「上司のお嬢さんへの贈り物選びに付き合って欲しい、ですって?」
休日、仕事の時とは打って変わったような奇抜な服装センスで。はっきり言って目を覆いたくなるような柄のシャツである。
が、本人は一張羅のように堂々としている。
ハンガリーはといえば、堅苦しくない格好で、と指定されたのでスーツは避けて、白のブラウスにチェックのスカート。ロンドンのドレスコードには反していないはずだ。
『似合ってるな』
ひとめ見て誉め言葉をくれた所はさすがに紳士だが、イギリス自身は桁違いのセンスの持ち主だった。
「そのユニオンジャック、愛国心が溢れてて素敵なんだけど・・・並んで歩くのはちょっと躊躇うわ」
待ち合わせた駅の改札でも、既に注目を浴びている。国家の体現と知っている人もいるのかもしれないが。
「え、そんなに可笑しいか!?新調したんだが」
「わかった、もういいから早くお店に行きましょう!」
真っ先に彼のコーディネートをどうにかしようと考え、近くで洋服を扱っているのは何処か尋ねた。

ジーンズはそのままでも大丈夫だと判断したので、無地のシャツを買い求めてトイレで着替えてもらった。
詳細を聞こうと、喫茶店で作戦会議である。
「アメリカ君の文化は嫌ってたんじゃなかったかしら」
「ジーンズは動きやすいからいいんだよ」
金髪を撫でつけながら、きまり悪そうに俯く。
「別にからかったんじゃないわ。で、どんな物を贈りたいの?」
「結婚祝いだから新居で使えるものを、と考えたんだ」
真っ先に浮かんだのはティーセットだった。
それならイギリス一人で何とか出来るのだが、人気商品だけあって他の誰かからもう受け取っていたらしい。
じゃあ別の品物を、ということで、第三者の知恵が必要になった。
「それで私?あまり得意分野じゃないんだけど」
「お嬢さんの結婚相手はハンガリーの血も入ってると聞いたから。同じ女性だし」
「そうね、気に入ってもらえるとは限らないけど。夫婦ふたりならキッチングッズを揃えてみたら使えるんじゃないかしら?」
可愛くて使い勝手の良さそうな道具たちを。
「ああ、それいいな。俺じゃ絶対思いつかなかった」
「じゃあ、予算に合わせて見てまわりましょうか」
席を立つと、向かい側から素早く背後に移動してきて、上着を広げてくれる。レディーファーストの習慣に馴染めたのはいつからだったろう。
歩く早さだって、彼と居る間はハンガリーに合わせてくれているのだ。

数軒の店で検討を重ね(結婚祝いと伝えたのだが、当事者カップルと間違えられてひやかされたりした)、カラフルだがごちゃごちゃしていない一式を手に入れて、満足したイギリスが礼にとレストランへ案内してくれた。
それは良いのだが、酒のお代わりを止めなかったのが彼女の落ち度である。
パブに行かなくとも泥酔してしまう性癖を失念していた。
「重いなあ。けっこう筋肉あるでしょ」
「んーサンキュ、妖精さん・・・」
ハンガリーはむっとした。彼を背負っているのは妖精ではないのに。
ふわふわした調子でイギリスは続けた。
「いつも聞いてくれてかんしゃ、してる・・・きょうはハンガリーと、仲良く、なれたぜ」
ひどく心地よさそうに、彼女の名を。今日あった出来事を語っていく。
ハンガリー、ハンガリー、ハンガリー。
愛しげな響きを持たせて、本人相手になんど言うつもりか。心臓にはあまりよくない。
「俺の片思い、これからも応援して、くれよな」
爆弾を落として、すやすや寝息を立てられたりしたら。
頬が熱くてたまらないではないか。

(この状態になるまで言わないなんてね)
昼間の、素面のときにまっすぐ瞳を見つめられたら、頷いてしまったかもしれない。どうでもいい相手に丸一日付き合うほど物好きじゃない。
でも、目覚めた彼は記憶していないだろうから。
「聞かなかったことにするわ。いつかちゃんと伝えてよね」
眠る男には届かないと承知で囁いた。

終わり
 

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