つむぎとうか
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普辺の前段階。
どれかのSSから繋がってる感じにしようと企むも挫折。
大きな家に露や洪他国家と同居してます。
あのひとがすべてだったのに、
お前のせいで狂いだした。
「離れろ、伝染る」
「たかだか風邪で騒ぐな」
喉が腫れている掠れ声の制止は無視だ。従ってなどやらない。
他に誰もいない状況で倒れられては。
「兄さんが不在の間でむしろ良かった。同じ家だと菌が心配だからな」
それまでに全快させると、慣れた手つきで看病体勢にはいる。ぎりぎりまで我慢していたのか、プロイセンは逆らう気力もないようだ。
「ロシアが帰るのはいつだっけ・・・」
「明後日だ。お前体力馬鹿なんだから間に合うだろう」
ベッドに寝かせて、水を与えたらおとなしく目を閉じた。静かにしていれば見られる顔だ。
とりあえず滝のような汗を拭いてやろう。
ストレスが溜まる度に、からかっては怒りを発散させてくれた男だ。甘やかされていると最近気づいた。
はじめてかもしれない、拳も刃も握らずに向き合うのは。
弱っている時くらいは優しくしてやるべきなのか。
(いや、付きっきりだとかえって互いに煩わしいだろう)
泊まりがけで出かけているのはロシアだけで、夕方には仕事を終えた国家たちが揃う。
一番望ましいのは、気心の知れた幼なじみに委ねること。
ハンガリーとプロイセンは、表面上の会話がなくても通じ合うものを持っている二人だった。少なくとも、そこには強い絆が横たわっている。
それでも、最愛の兄はハンガリーの心を望むのだ。
邪魔なつながりを消すことも出来なくて、プロイセンに当たり散らしたこともあった。
いや、現在進行形で攻める一方である。
「私に構う必要はないのに」
寝息を立てる男に届くはずもないので、ぽつり本音を落とす。
癪に障るが、ベラルーシが本気で落ち込んでいる時には側に居てくれた。ひとりになりたい時は人払いをして。
男の存在に救われたこともあったのだ。
けれど懐かれても困るだろう。男が気に掛けてくる理由なんてわかりきっているのだから。
『ヴェストに会いてえな』
気づかないとでも思っていたのか。
彼女は弟とやらの代替品に過ぎない。
※
久しぶりの深い眠りのなか、夢をみた。
「よく無事で戻って来られたものだ」
わざと他人事みたいな言い方をし、照れ隠しに目を合わせない。
プロイセンは、ドイツを少し見上げて豪快に笑った。
「離れてる間に、すげえムキムキになったな!」
「贔屓目だろう。俺はそんなに変わっていないぞ」
兄さんは少し痩せようだが。
「そうかぁ?ますます男前になったってことだろ」
「中身はそのままらしいな」
――安心した。向こうは厳しい環境と聞いていたから。
「ケセセセ、俺にとっては軽い試練だったぜ!発見だってあったしな。ベラルーシっているだろ、無表情だけど結構面白い奴でよー」
積もる話があり過ぎる。
何十年単位で会えていない弟だ。夢だとわかっていても必死で喋った。虚しくなることはなかった、それでも。
「べそべそ泣いてみっともない」
頬を撫でて覚醒させたのはハンガリーだった。
勝手に涙が溢れただけだが、照れ隠しにそっぽを向く。
彼女相手なら格好つけても意味がないが。
「汗だよこれは。おかげですっきり回復、爽快だぜ」
「ベラルーシのお陰でしょうが」
あの子がしてくれたんでしょう、と。枕元の薬やら体温計が載った盆を指さして。
「無言でここの鍵を渡されたわよ。初めて入ったけど、いい部屋じゃない」
「ここ、俺の部屋じゃなかったのか!?」
驚いて辺りを見回せば、ベッドのシーツも慣れた匂いとはちがう。
鈍った勘が戻ってきた。
客室かと思えば、ベラルーシの自室らしい。
『私は兄さんの部屋を掃除するのに忙しいんだ』
ぽつり囁いて姿を消した、素直じゃない少女。ハンガリーは僅かに目を細める。
「あの子もたまには柔らかい表情をするのね。あの様子だと優しく看病してもらえたでしょ?」
「ロシアにうつるのを心配してるだけだって言ってたぜ」
「額面通り受け取るからあんたは馬鹿なのよ」
病人相手じゃなかったらきつい突っ込みが入る所だ。
「それだけの理由なら親身に世話なんて出来ないわよ。プロイセン、元気になったら女心ってものをじっくり教えてあげる」
「お前がか?途中で狩りの昔話にすり替わるんだろ」
「その失礼さを何とかしろってことよ!」
――とにかく起きて動けるようになったら、真っ先にありがとうを言いに行きなさいね。ロシアが不在の間は後を追いたがるベラルーシが、珍しくあんたにかかりきりだったんだから。
(素直じゃねー女。ま、少しは歩み寄れてるってことだよな)
取り戻したはずの平熱が、また上昇したような気がして、プロイセンは思わず胸を押さえた。
が、苦しさは感じなかった。
終わり