つむぎとうか
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強がりの本音
プロイセン誕生日おめでとう!(滑り込み)
1時間以内に1RTされたので、同僚パロでお姫様抱っこの普辺を書きました。
パロなので人名です。ギルベルト(28)、ナターリヤ(23)
同僚の意味を激しく取り違えてますが、同等ポジションにいるんだと解釈してください…
1時間以内に1RTされたので、同僚パロでお姫様抱っこの普辺を書きました。
パロなので人名です。ギルベルト(28)、ナターリヤ(23)
同僚の意味を激しく取り違えてますが、同等ポジションにいるんだと解釈してください…
背中にかかる重みは同僚の女のもの。
飲み会後、なんの因果か、送っていくことになった。マンションが社員寮を兼ねているので住居は近い。店からの距離だって徒歩数分だが――何とも大人しい顔に拍子が抜ける。
日頃が口数少なくとも怖い印象を与えがちなナターリヤだが、一年前は学生だったのだ。職場でのやり取りが別世界に感じられるほどあどけないものだった。
とはいえ、ギルベルトだってまだまだ経験が浅い。所属する部署では、彼と彼女が最年少で他はベテラン社員揃いだ。
入社五年で配属されたギルベルトはともかく、ナターリヤが肩肘張らなければやっていけない理由だった。
「バイル、シュミット」
負荷が増したかと思うと、半覚醒の声が降ってきた。数秒のち、状態を把握した女の金切声が襲う。
「暴れるな抓るな落ちるとやべえだろ。酒の席で倒れたのはお前だ!」
「そうか、余計気分が悪くなるから下ろせ」
無愛想に聞こえるが、いつもからすれば柔らかい調子だ。酒のせいで力が入らないのか。
「真っ赤に染まってるくせに何言ってやがる。もうちょいでエントランスだから我慢しろっつの」
「嫌だ離せ」
一旦停止しての押し問答。結局、彼女の要望を容れることにしたのだが、ふらつく足取りは明らかに無理をしている。
フロアは違うが、心配で部屋まで同行してしまった。
「鍵わかるか?手元も怪しいようなら渡せば――おい、大丈夫か?」
ドアノブに縋るようにしてしゃがみこんだ様子は、紅潮を通り越して真っ青で。
許可をとらずショルダーバッグのポケットを探る。後で怒られても仕方がない。
キーホルダーを取り出して扉を開け、玄関に運ぶ。
首筋と両膝をに腕をかけ抱きかかえても、抵抗もせず。ただ息遣いが荒くなっていくのがわかった。
額に手を添えると、火傷しそうに熱い。
(病人を置いて帰れるかよ)
ギルベルトは世話焼きな兄だったので、弟の時と同じように看病する手順を確認した。まずは温めることだ。
「ベッドはあれだな。着替えは…むやみに捜さないでおくか。けどタオルくらいは欲しい」
洗面所の見える位置にタオルラックがあったので新しいものを出した。
汗を拭こうにも脱がせるわけにも、と悩んでいたら弱々しく貸せ、とひったくられた。
「自分でできる。ここまでも大分借りを作ってしまった」
「気にすんなよ、宴の席ではお互い様だろ」
「仕事、だって」
ナターリヤは泣きそうに歪んだ表情だ。氷のような女というのが共通見解だったのに。
「私は実力でいまのポジションにいるわけじゃない」
…新入社員でエリート部署に配属されたのが、実家の威光という噂は的を射ている。
入社した時点で将来の地位も決まっていた。
「不正も手抜きもしてねえだろ。お前の頑張りくらい周りは認めてるぜ」
幼子のように首を振る女の就業姿勢を、見誤るほど子どもじゃない。
「若さのぶん重いもの持たされてるのはわかってるよ。普段から言ってるだろ、『先輩に頼れ』って」
ギルベルトも下っ端だが、甘やかすくらいの余裕はある。
「薬は常備してるか?水といっしょに持って来る」
ぽんぽんと頭を撫でる。髪を留めていたリボンは解けてしまったが、少しだけ緊張が緩んだらしい。
すうすうと寝息を立てはじめ、男は苦笑した。
「とっとといつもの調子を取り戻せよ」
こちらまでペースが狂ってしまう。
「おやすみ、ナターリヤ」
男の全身にもようやく酔いがまわってきて、ゆっくりと自室に向かった。
翌朝早めに出勤すると、先にデスクについていたのは女ひとりだった。
「よぉ、回復したか?」
「誰かさんのおかげでな。――ありがとう」
「いくらでも称えて偉大な先輩として仰げばいい。そうだな、一つ言うことを聞いてもらおうか」
「素直に感謝してた自分を抹殺したくなってきた」
「ギルって呼べよ、俺のこと」
これまでファミリーネームで通してきたのは目の前の同僚だけだ。
「アルロフスカヤなんて初日しか使わなかっただろ?」
「馴れ馴れしいから拒否したいが仕方がない」
ギルベルト――
困ったら遠慮なく寄りかかるから覚悟しておけ。
お前から申し出たんだからな。
「ああ、可愛く強請ったら教えてやる」
投げつけられた書類をひらりと交わしながら。
出勤してくる他の社員の怪訝な視線を受け、男は舌をだした。
終わり
飲み会後、なんの因果か、送っていくことになった。マンションが社員寮を兼ねているので住居は近い。店からの距離だって徒歩数分だが――何とも大人しい顔に拍子が抜ける。
日頃が口数少なくとも怖い印象を与えがちなナターリヤだが、一年前は学生だったのだ。職場でのやり取りが別世界に感じられるほどあどけないものだった。
とはいえ、ギルベルトだってまだまだ経験が浅い。所属する部署では、彼と彼女が最年少で他はベテラン社員揃いだ。
入社五年で配属されたギルベルトはともかく、ナターリヤが肩肘張らなければやっていけない理由だった。
「バイル、シュミット」
負荷が増したかと思うと、半覚醒の声が降ってきた。数秒のち、状態を把握した女の金切声が襲う。
「暴れるな抓るな落ちるとやべえだろ。酒の席で倒れたのはお前だ!」
「そうか、余計気分が悪くなるから下ろせ」
無愛想に聞こえるが、いつもからすれば柔らかい調子だ。酒のせいで力が入らないのか。
「真っ赤に染まってるくせに何言ってやがる。もうちょいでエントランスだから我慢しろっつの」
「嫌だ離せ」
一旦停止しての押し問答。結局、彼女の要望を容れることにしたのだが、ふらつく足取りは明らかに無理をしている。
フロアは違うが、心配で部屋まで同行してしまった。
「鍵わかるか?手元も怪しいようなら渡せば――おい、大丈夫か?」
ドアノブに縋るようにしてしゃがみこんだ様子は、紅潮を通り越して真っ青で。
許可をとらずショルダーバッグのポケットを探る。後で怒られても仕方がない。
キーホルダーを取り出して扉を開け、玄関に運ぶ。
首筋と両膝をに腕をかけ抱きかかえても、抵抗もせず。ただ息遣いが荒くなっていくのがわかった。
額に手を添えると、火傷しそうに熱い。
(病人を置いて帰れるかよ)
ギルベルトは世話焼きな兄だったので、弟の時と同じように看病する手順を確認した。まずは温めることだ。
「ベッドはあれだな。着替えは…むやみに捜さないでおくか。けどタオルくらいは欲しい」
洗面所の見える位置にタオルラックがあったので新しいものを出した。
汗を拭こうにも脱がせるわけにも、と悩んでいたら弱々しく貸せ、とひったくられた。
「自分でできる。ここまでも大分借りを作ってしまった」
「気にすんなよ、宴の席ではお互い様だろ」
「仕事、だって」
ナターリヤは泣きそうに歪んだ表情だ。氷のような女というのが共通見解だったのに。
「私は実力でいまのポジションにいるわけじゃない」
…新入社員でエリート部署に配属されたのが、実家の威光という噂は的を射ている。
入社した時点で将来の地位も決まっていた。
「不正も手抜きもしてねえだろ。お前の頑張りくらい周りは認めてるぜ」
幼子のように首を振る女の就業姿勢を、見誤るほど子どもじゃない。
「若さのぶん重いもの持たされてるのはわかってるよ。普段から言ってるだろ、『先輩に頼れ』って」
ギルベルトも下っ端だが、甘やかすくらいの余裕はある。
「薬は常備してるか?水といっしょに持って来る」
ぽんぽんと頭を撫でる。髪を留めていたリボンは解けてしまったが、少しだけ緊張が緩んだらしい。
すうすうと寝息を立てはじめ、男は苦笑した。
「とっとといつもの調子を取り戻せよ」
こちらまでペースが狂ってしまう。
「おやすみ、ナターリヤ」
男の全身にもようやく酔いがまわってきて、ゆっくりと自室に向かった。
翌朝早めに出勤すると、先にデスクについていたのは女ひとりだった。
「よぉ、回復したか?」
「誰かさんのおかげでな。――ありがとう」
「いくらでも称えて偉大な先輩として仰げばいい。そうだな、一つ言うことを聞いてもらおうか」
「素直に感謝してた自分を抹殺したくなってきた」
「ギルって呼べよ、俺のこと」
これまでファミリーネームで通してきたのは目の前の同僚だけだ。
「アルロフスカヤなんて初日しか使わなかっただろ?」
「馴れ馴れしいから拒否したいが仕方がない」
ギルベルト――
困ったら遠慮なく寄りかかるから覚悟しておけ。
お前から申し出たんだからな。
「ああ、可愛く強請ったら教えてやる」
投げつけられた書類をひらりと交わしながら。
出勤してくる他の社員の怪訝な視線を受け、男は舌をだした。
終わり
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