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つむぎとうか

   
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遠き地より

カイルカ小ネタ。
12/21は遠距離恋愛の日だそうで。
ぎりぎりですね!

吐いたそばから白く染まる吐息に、ルカはがっくりうなだれた。
学生寮の門柱にもたれかかる。冷たい…馬鹿みたいだ。
内部は管理人さえ休暇をとってがらんとしている。
学生はほぼ全員実家へ帰っているか、もしくはリゾートに。ルカとて留学生、故郷が恋しい。
遅くとも、イヴには日本へ到着している予定だったのに。
(課題も余裕を持って提出したし、引き留められる理由なんて無かった筈よ)
…あったのである。授業での模範態度が認められて、教授主催のクリスマスパーティーへ招かれたのだった。
断ろうにも善意の申し出ゆえ逆らいにくく、結局飛行機の便は三日ほど後ろにずれた。
知った顔を最後に見たのは半時間ほど前。
『何してるんだルカ』
『アル、どうしてここに?』
『忘れ物を取りに来ただけさ』
寮には残れることになったものの、無人の部屋へ帰る気が起きない。普段は四人部屋で賑やかにやっているから尚更。
(メールを見て、カイトは落ち込んでるかしら…)
忘れられてたらどうしよう、今日はネガティヴな思考に陥りやすい。
風邪をひくよりはと、門をくぐって玄関の明かりを点けた。

日本で過ごしたのは中学・高校の六年間。
大切なものが沢山できた中でも、カイトは特別な存在だった。
随分早い時期から、大学では再び留学しようと決めていたのだ。日本に慣れ過ぎてはいけないと思った。
『でも、俺はルカと一緒に居ると楽しいな』
いつも気の抜けたように笑っているくせして、時折真剣な眼差しを注がれ――降参した。
付き合いだすと存外、優しいだけの男ではなかった。
『行くのを止める権利はないし、俺も君も気持ちは変わるかもしれない。ただ、自然消滅はさせないよ』
長期休みは必ず会うこと。
守るべき約束をひとつ交わして、メールのみのやり取りを続けてきた。
(顔を見たいなぁ)
帰国延期のメールを送って、“わかった、待ってる”の返信も来て、しばらくぼーっとしていた。
パソコン画面の文字からだって、カイトらしさは伝わる。ただ、高まった期待の行き場が見つからないだけだ。
夏以来のデートも、あちこち計画を練っていたのに。
クローゼットから桃色のマフラーを取り出す。早めに届いた高校時代にもらったクリスマスプレゼントだ。暖房の効いた室内だが、ぐるぐる巻いた。
偶然、ルカも色違いのマフラーを用意していて、お揃い状態になった記憶がある。
懐かしい。青いマフラーは健在だろうか。

画像送付メールが送られてきた。
タイミングぴったりに、件のマフラーを大事そうに抱えたカイトが、画面の向こうで笑っていた。
少しだけ元気が出た。
(もうすぐ、きっとすぐだわ)

終わり

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