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つむぎとうか

   
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宣戦布告
普辺。
盛大に夢を見ているので注意。

「ベラに何をしたのさ」
息を切らして訪ねたプロイセンを、ロシアは冷たく突き放した。
数十分前、ベラルーシが泣きながら玄関の扉を叩いたばかりだ――出会い頭の求婚すらせずに。
涙の止まらない妹が漸く落ち着いたかという所で、元凶の登場だ。
兄として容易に通すわけにはいかない。
「しばらく、出入り禁止だから。ベラも出さないよ」
プロイセンは反論したげに瞳を見開いたが、一瞬の沈黙の後、大人しく引き下がった。

門前払いの様子を、ベラルーシは二階の窓からそっと眺めた。
自分が行けば丸く収まるが、まだ顔を合わせたくない。
(これで縁切りだろうか)
元々可笑しな話だったのだ、兄一筋であった自分が別の男を選ぶなどと。
次から次へと胸が塞がれる。呼吸が苦しい。
(あいつもそのうち、愛想を尽かすだろう)
コンコン、控えめなノックが耳に届く。
「ベラちゃん、開けてくれる?」
「姉さんが、話を聞きたいって」
ロシアの連絡で、ウクライナが飛んで来たのだった。

泣き腫らした目が赤い。
ウクライナはロシアに「ベラちゃんと二人っきりにして」と頼んだ。彼の力を借りるのは、もう少し回復してからだ。
「  」
普段から口数は多くない妹だが、いまは言葉を探しあぐねている、といった風情だ。痛々しい。
「プロイセンちゃんと喧嘩しちゃった?」
「・・・ちがう」
意外な返答だ。では何故泣きじゃくる羽目になったのか。
「私が、一方的に怒鳴って、飛び出、した」
途切れ途切れに語る、不和のきっかけ。
プロイセンがミンスクまで出向き、ベラルーシの自宅で休日を過ごすことにした。
久しぶりの水入らず。ウクライナの知る限り、プロイセンとベラルーシが付き合い始めてから二十年以上は経つ。――国家として、長いか短いかと問われればわ からないが。
外でデートしている二人を見たことはなくとも、お互い一緒に居る時間は確保しているようだった。
深い亀裂が発生したのだろうか。
「無理なら教えなくてもいいよ?ロシアちゃんが人払いしてくれるし」
「悪くないんだ、あいつは」
上擦った声で説く。彼に傷つける意志はなかった、と。
ただ、わかってしまったのだ。
「私とあいつは、寂しい時にたまたま側にいただけだ、って」

「めちゃくちゃ心外なんだが」
俯いたベラルーシだけを視界に映していたら、突然プロイセンが現れた。
「え、どうやって入ってきたの!?」
「強行突破以外にあるか」
軍服の男の背後でロシアが頭を掻いていた。役に立たないボディーガードだ。
「諦めて帰ったんじゃなかったのか、プロイセン」
せっかく鎮まりかけた感情がまた波立ったらしい。立ち上がったベラルーシは震えている。
「あのなあ――恋人がわけのわからねえ不安抱えてるのに、はいそうですかって戻れるかよ」
叫んだわけでもないのに空気が振動する。
ウクライナもロシアも、硬直したまま当事者同士を見守るしか出来ない。
「ベラ、去り際に何て言った?『お前はもう弟や友人たちに囲まれてるから』!?ふざけんな、お前の代わりなんていねえ!」
それとも、お前にとって俺は誰かと交換可能な存在だったのか?と。
決して声は荒げず、冷静に問う。
「私とお前は違う。いつも前を見て、ひとりでも胸を張って、そんな生き方は私には出来ない・・・!」
「俺だって無理だよ、もう」
話題の八割は兄で、すぐむすっとするし、プロイセンの行動に逐一棘を刺してくる生意気な少女。
ベラルーシのいない日々なんて想像がつかない。
「隣に居ろ、嫌がっても離してやらない!」
日本曰くのガキ大将みたいな言い草で。
プロイセンは貪欲に求めるだけだ。
「ふざけるな、本気で嫌になったら倒して逃げている」
でも、まだ足りないから従ってやる。――感謝しろよ?

先刻までのしおらしさはどこへやったのか。
好戦的な台詞を投げつける傍ら、少女は恋人に抱きついた。
約二名の傍観者など忘れ去って。

(ねえロシアちゃん、結局ただの痴話げんかだったね)
(深刻そうな顔をしておいて・・・ねえプロイセン君、余所でやってくれる?え、聞いてない?)
でも、ベラルーシの悩みは解決したらしいので、その点だけは感謝しておこうか。
((今度泣かせたら総力で潰す))
兄と姉は、視線を交わして拳を握った。

終わり

すみませんでしたー!
 

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