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つむぎとうか

   
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マーシュの双子
カイトとリリーとリンとレン。
mayukoさん曲の世界観に焦がれた破片妄想です。
※リンレンは十歳くらい

~♪
(歌が、聴こえる)
囁くように小さく口ずさむ、遠い記憶を呼び起こすためのメロディ。
母の膝に抱かれ、強請ったのは両親の昔日の話。
国内外で良妻と評判の母の出自は取沙汰されなかった。
祖父母に尋ねても「さあ?」と首を傾げるのだから、当人たちしかわからない出会いがあったのだと思う。
十を越えたばかりの幼子でも、王家の婚姻に煩わしい規約がついてまわるだろうことは察しがつく。
けれど、父・カイトがどこからともなく連れてきた母に対して、誰も文句ひとつ言わないのだ。
『だってリリーは恩人だから』
国王の一人息子である父は、若い頃は放浪癖があったという。
周囲がいくら危険だと諫めても、一向に改まらなかったのだそうだ。
カイトがふらり行方をくらませた最後の日付けが十一年前。
丸二年近く、音信不通が続いたらしい。
祖父母が捜索を諦め、葬式の算段を立てはじめた矢先、母と自分たちを携えて戻ってきた。

ソファに身を投げ出して、レンは無邪気に上目を遣う。
「お母様はこの国の人ではないの?」
母や双子の髪の色は、珍しい明るい色をしている。太陽のようだと珍重される所以だ。
「――いいえ。私は国はずれで生まれたの」
傍らの姉に目配せした。別段隠している様子もない。
「じゃあ、お父様とはどうやって恋に落ちたの?」
ゆうべ打ち合わせておいたシナリオの通りに。
年頃の少女らしく、瞳をきらめかせてリンは問いかける。
「長くなっていいなら、教えてあげる」
いらっしゃい。手招きに歓声をあげ、両膝を占領する。
「賑やかだな。仲間に入れてくれるか?」
政務を終えたのか小休止か、父がやって来て妻の隣に腰かけた。

『わたしたちはどこからやってきたの?』
ここ最近、毎晩のように夢を見る。誰かにひたすら呼ばれ続ける夢を。
その悩みが自分ひとりのものではないと知って、姉弟は相談した。
同じ夢のなかで響くのは、若くない――祖母よりも年を重ねていそうなしゃがれた声。
不思議と恐ろしくはない。
『何も関係ないかもしれないけど、知らないことはなくした方がすっきりするだろ?』
母の過去に原因を探ろうと、意見を一致させた。

(ねえ、レン。お母様はなんと歌ったのかしら)
(懐かしい呪文だね)
父母が紡ぐ出会いの歌は、そのまま魔法を起こす鍵となって子どもたちを揺する。
けれど、幸せに目が眩んだ夫婦は忘れているのだ。
魔女のかけた途切れることのない契約。
“かえっておいで、私の元へと”
((思い出したよ))
母の輝くばかりの美貌の根源。
父が奪い、リンとレンが生まれる間に、胎内で刻まれた誓いの内容を。
『その身を私に捧げなさい、』
「「ラプンツェル」」

次期国王夫妻は驚いてまばたきを繰り返した。
かつての母の名を、なぜ彼らの愛し子たちが唱えられるのか。
「お父様、お母様。ヴァイオリンのお稽古があるから」
「昔話はまた今度にね」
じゃあ、ぼくらは行くから。
手を振る双子に、カイトとリリーはぎこちない笑顔しか向けられなかった。

終わり

逃げ出したのは彼女のエゴ。
彼女をこの手に閉じ込めたのは彼の罪。
さて、代償を求めるとしたら?

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