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つむぎとうか

   
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氷菓遊戯
ルカイト。
少々ふざけすぎました。

唐突に、悪寒が背筋を撫でた。
暖房の設定温度を間違えたか、そもそも器具が壊れているのか。
この季節なのに汗がにじむ。家に誰もいなかったので、暑さのあまりシャツを脱いで、洗濯機に投げたところで恋人が帰ってきた。
世間でどう認識されているかは知らないが、カイトは裸マフラーを常態としているわけではない。あれはキャラづくりだ。思春期の妹たちへも気兼ねして、普段はむしろ節度ある格好を心がけている。
が、ルカならいいか、見られても-――気を緩めたのも事実で。
着替えのシャツを捜すのも面倒で、カイトは何食わぬ顔で居間のソファーに座った。
彼女も特に苦言を呈すわけでもなくただいま、と告げて、喉渇きません?とコップに水を注いで渡してくれた。
今思えば、彼女は無表情で暴走するタイプだった。
コップを干した直後から、意識が途切れた。目を開けたら見覚えのない部屋で、ルカが歓喜をたたえてカイトを見つめている。
「気分はいかがです?」
「その前に俺から聞こう。この状況に納得いく説明をくれ」
上半身がすーすーして寒い。裸のままならまだしも、妙にひらひらした布切れが被せられていた。女物のエプロンである。
無論ルカが勝手に着せたものだろう。――カイトに睡眠薬を盛ったその隙に。首もとにも違和感があるから触ってみた。
首輪で身動きを制限されており、極めつけには頭にぴょこんと装着させられた猫耳である。
これが大の男、というか恋人に対しての仕打ちだろうか。
ルカはそれはそれはいい笑顔で「似合ってますよ」と言い放った。
「俺に不満があるなら、回りくどいやり方をせず教えてくれ」
「不満なんてない、と言いたいですけど…隙だらけなのは直していただかないと」
私の心が安まりません。
憂い深く嘆息をして、ルカは冷凍庫の扉を開けた。
「とはいえ、私も鬼じゃありませんから」
いい子にしてたら、ご褒美をあげます。
スプーンと共に取り出したのは、ハーゲンダッツのバニラ。極限下でも、好物を前に喉を鳴らしてしまうのは仕方がない。
「じっとしてて下さいね」
彼女はスプーンで惜しげもなくこんもり掬うと、待ち詫びるカイトの唇数センチ前にまで持っていき、ぱくり、自分の口に入れた。
「ああっ!?」
恨めしげに見やるが、一向に悪びれる様子もなく、「何の見返りもなしに差し上げるなんて嫌です」と、エプロンの紐をしゅるり解いた。

カイトがアイスを食べる頃には、熱気でカップの中身が半分溶けてしまっていた。

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