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つむぎとうか

   
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取り残されて

カイルカで赤江瀑 「阿修羅の香り」パロ。
ルカ事故死後のキヨテルとカイト。
 


ひどい頭痛に目が覚めた。
眩暈を引き起こすほどの酔うことは、職業柄控えるようにしているのだが――
忘れたいことがあるときは別だ。

ルカが車に跳ねられたという報せが届いたのは真夜中だった。
目撃者は口を揃えてこう証言したという。
――信号を無視して飛び出したのは彼女の方だった、と。
カイトが、何度も自分の足で尋ね回ったのは、恋人なのだから当然の話だろう。
死の現場は、彼らの恋が始まった場所でもあった。
それ以降、取り憑かれたように仕事に打ち込むカイトを横目に、キヨテルは心の奥底に秘密をしまい、錠をかけた。

従妹のルカをカイトに紹介したのはキヨテルだった。
彼らを引き合わせ、実妹のように可愛いがっていたルカを喪った。
カイトにだけは決して洩らすまいと誓った事柄。
死ぬ筈のないルカが、どうして車の前に飛び出したのか。
――訃報がもたらされた直後、遺族となった彼女の父の告解を聞いた。
「あなたは、ルカさんの結婚に反対したという。それだけが理由のはずがありません。彼女が、死だけを絶対に必要としたのは何故だったんですか?」
「キヨテル君。君ならどうしたんだ、彼が、異母兄だとしたら」
「異母兄―?」
「そうだ。別れた女の、息子だ。私は驚いた。こんな偶然があるのか、とね」
疑問符がたちどころに氷解していく。
ルカが選んだ道がわかった。
そこには絶望が横たわっていたのだ。
『死だけが、永久の幸福を約束してくれるのだとしたら』
『物騒な話をするね。カイト君と喧嘩でもした?』
『まさか』
涙が止まらなかった。
カイトは、血のつながりを知らない。
死だけが恋の成就を守ってくれると知っていたルカに、いつまでも追いつけないのだ。

『ずっと、彼女に囚われたままです』
会うたびやつれていくカイトは、遠からず死に至るのかもしれない。それが不幸だと誰が言える?
届かない幻影に焦がれる彼と、去りし彼女。
幕を降ろせる役は、もういない。
 

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