つむぎとうか
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たぶんこれの次です。
「最近、お兄さんと仲良いみたいじゃない」
何気なく指摘したのはハンガリーだ。
会議の最中、つかの間の休憩時間。雑談のあいだに挟まれた固有名詞にも反応してしまうだなんて。
「スイスん所ほどちゃうけど」
「今までのあなた達からしたら随分歩み寄ったわよ」
長く友人をやっていればわかる。距離感を掴み損ねていた二人。
切れかけた糸を見ているみたいではらはらしたものだが。
「ベル、親分にワッフル焼いてくれてほんまありがとうなぁ!」
「お、俺にだってくれたんだぞちくしょー」
「はいはい、喧嘩せんと食べてな」
元の同居人たちと親しい彼女。
睨むように窺う視線に、気づいてしまったら放置はできない。
「言わなきゃ伝わりませんよ?」
「何のことや」
無意識だなんて性質の悪いこと。溜め息が重くなる。
元々、国同士の関係なんて微妙なもので。オランダとベルギーには喧嘩別れした過去もあり――
別離直後は、どちらも痛々しくやつれていたような記憶がある。
『ハンガリー、うち、何の前置きもせんと出て来てしまったんよ』
乾いたそばから溢れた涙を拭った。
『もう会えへんかもしれんのに、』
気丈な女性だと思っていた。周囲に流されておかしくない状況でも、自我を通す強さを持っていると。
…大事な存在と別れたベルギーは、幼い少女みたいに弱々しかった。
「妹なのか、それ以上か。あの子の不安を拭えるのは、あなたしかいないんだから」
オランダとはあまり親しくないから、つい責めるみたいな口調になってしまうのだけど。
「簡単には決められん」
そもそも、あいつの初恋はもう思い出やろ。
一人頷いて背を向けた男に、ハンガリーは呆れた。現在進行形だから心配しているのに。
(兄妹揃って鈍感なのかしら)
肩までの金髪を揺らした妹も似たようなものだった。
『時効やってことで、冗談みたいにばらしてみたの。おにいちゃんは何とも思わへんたみたい』
完璧にすれ違っているのではないだろうか。
「なあオランダ、みんなでパーティーしよっか!」
「スペイン同席は嫌やざ」
ぎゃあぎゃあ騒がしいくせ、向き合った途端におとなしくなる。どちらかが踏み出せる日が早く訪れますように。
(もう、離れることにはならないわよね?)
終わり