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つむぎとうか

   
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転生義兄弟3
タイトル思いつかない小ネタ3。


「喉が渇いた」
 開口一番、えらそうに。しかも貴重なソファを独占しながら、ギルガメッシュは額に指を突きつけてきた。
 無表情と評される綺礼も、これにはさすがに怒った。怒るとますます表情筋が硬くなるので、周囲には(近しい友人を除いて)わかりにくい変化だが。
「気が合うな新入り、私もちょうど何か飲みたかったところだ。ついでに全員分の茶を淹れて配るまでが常識だぞ」
「何をほざくかこやつ。我は生徒会じゃない、当然雑用なぞ引き受けぬ」
「所属していないならそもそも生徒会室に立ち入るな部外者。仕方がない、私がやろう」
 ――いつもの紅茶で宜しいですか? と、時臣を振り返る。
「うん、今日はストレートがいいかな」
 ならば、と然るべき茶葉を棚から取り出し、綺礼は湯を沸かそうとコンロに向かう。背後で、我はコーヒーにしろ、などと喚いているのは無視だ。働かざる者、紅茶を貰えるだけ有り難く思え。
 もちろん、そんな謙虚さを持ち合わせている相手でないのは百も承知だけれど。

 四月から、放課後の生徒会室は賑やかさというより騒がしさを増した。たったひとりの新入生の所為で。
 生徒会に正式に入るでもなしに、勝手に上がり込みふんぞり返っているギルガメッシュを、生徒会長と副会長をそれぞれ引き継いだ切嗣と綺礼は何度も追い出そうとした。
 だが、引退後もちょくちょく手伝ってくれている時臣が嬉しそうにしているので、強硬手段にまでは至らなかった。
 人数もいないせいか、新三年生たちは何だかんだで放課後の生徒会室に良く顔を出した。
 時臣は当然として、ソラウや葵も手に負えない仕事を引き受けてくれているけれど、ギルガメッシュは本当に何もしない。
 これといった妨害やら迷惑行為こそ仕掛けてこないものの、邪魔だし目障りだ。特に、仕事している役員たちを尻目に携帯型ゲームなどに興じられた日には。
「時臣、貴様助役とか言って座ってるけど誰からも頼りにされていないではないか! 来る意味もあまりないだろう?」
 お前が言うな、と綺礼は思った。嫌みだと気づいているのかどうか、受け答えする時臣の態度は穏やかだ。
「私が不要になるくらい頑張ってくれているんだよ。それに、ここの机だと勉強が捗る」
「ほほう、家では集中できないだと? 我のせいにする気か」
 どう考えてもただの事実だ。綺礼が遊びに行って、ギルガメッシュが居間でゲームしていなかった試しがない。やたらと大音量で、防音設備がある時臣の私室にすら響いていた。遠坂邸の周りに他の家が建っていたら騒音公害で訴えられかねない。
「ギル、君がおそろしく頭良いのはわかってるけれど、私は人一倍やらないと駄目なんだよ」
 前世も今生も変わらず、時臣は努力の人だった。綺礼とて同じだ。二人の真面目さを嘲笑うように、ギルガメッシュは問題集など解かずとも答えがわかるとかほざいていた。
 義弟の傲岸さを、時臣はたしなめはするのだけれど、結局甘やかしている。綺礼以外の生徒会メンバーは仲が良いのね、と微笑ましく見守っている。
 何という茶番だろう。
「つまらぬ上に効率の悪い奴だな」
 ギルガメッシュは最初から義兄を呼び捨てにしている。時臣、と。それもひどく軽んじる声音で。
 誰もこの不自然さに気づいていないのか?

 いや、一人だけ首を傾げている者がいた。
「ギルガメッシュ、お前言い過ぎだ。時臣もヘラヘラすんなっ、だから舐められるんだろうが! 家族は虚仮にしていいもんじゃねーんだぞ!?」
「……チッ」
 舌打ちしながらも、一応は先輩である雁夜のお陰で、ギルガメッシュの時臣に対する罵倒は一時的にせよ収まるのだ。
 生前の関係を考えれば、随分と笑える構図で、綺礼は唇を捻じ曲げた。



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